ラストステージ「売春捜査官」①

 

無事に
Last Stage「売春捜査官」

全７公演（＋イベント）を終えることができました。

 

連日超満員のシアターKASSAIは、それはそれはあたたかい場所でした。

このわずか一ヶ月ほどの間
関わってくださったすべての皆様
ご来場くださったすべての皆様
ありがとうございました。

あまりにも怒涛すぎて
まるで一ヶ月の記憶が抜け落ちたような感覚です。

ただ千秋楽翌日の、身体全身に残る重たさが、終わったのだという実感をもたらしています。

 

千秋楽を終えて。

公演中、自分がこれで最後だとかそういうエモーショナルな感覚は全くなくて。
『興行としてこの作品を大成功に終わらせたい』
という責任と
『ひとつ前の公演よりもよりよい演技を皆様へ』という役者としてごくごく当たり前の感覚しかありませんでした。あとは身体や喉のケアをいつもより更に念入りにするとか。当たり前ですね。

なぜならそれは、公演を成功させることが、自分のために集まってくれた皆やスタッフに対する一番の恩返しだからです。

そしてその目標は、あたたかいお客様の愛によって無事に達成できたのではないかと思います。
本当にありがとうございました。

わたしの周りにいるひとたちはすげーんだ、愛に満ちたすげぇ人たちなんだって示せたかな。

 

小屋入りした日、当日運営や票券を担ってくれた制作の奏恵ちゃんが「てか粗品のボールペンめっちゃいいんだけど！」と笑顔で楽屋の階段を登り駆け込んできたあのときから、まるでシアターKASSAIが巨大なコロシアムのように見えた満場のスタンディングオベーションの千秋楽のあの景色まで。ああ、すべて私の目にうつるものを録画しておきたかったな。でも愛は目にうつらないからいいか。

 

熊田の目も

金ちゃんの声も

水野の背中も

今も目にヒリヒリと、脳裏にぐわんぐわんと浮かぶ。

なんて凄まじい空間だったんだろう。
なんて美しい日々だったんだろうね。

みなさんの目にはどう、映りましたか。

 

木村伝兵衛という女、そして山口アイ子

警視庁捜査一課部長、木村伝兵衛女刑事

 

傲慢で自分勝手な女と解釈するか

根の繊細さや、愛の深さ、その気高さに感嘆するか

弱さを見るか、強さを見るか。

自由と見るか、孤独と見るか。

 

結局人のイメージなんて、誰かの勝手な解釈でしかない。

 

どれだけ誹謗中傷にあふれた世の中でも
だれかが死んだ瞬間に、その人を称える称賛の追悼コメントで溢れます。
そんなもんです人間なんて。

社会なんて薄情でぺらっぺらだ。

 

この作品で一切の悪意がなく清らかに描かれる存在は
自死を選んだ李大全しかいません。

ほかの登場人物は皆、往々に生きている。
そう、生きている。
汚くも美しく生きている。
生きるとはなんと不器用で純粋なことか。
これはきっと、人間讃歌の戯曲なのです。生きることを描いた作品なのだと、終わった今あらためて感じます。

わたしは、生きる人間を肯定したい。
薄情でぺらっぺらじゃない、たしかなものがわかる人たちは確かに存在する。

コケと呼ばれた千円女、山口アイ子

 

山口アイ子。決死の高級ブランド品を身にまとう女の、その小さな衿持よ。
文字にすれば身体を売る女の悲哀となるわけだが、私はそのアイ子の可憐さを忘れない。アイ子の可愛さは、シャネルのイヤリングの何億倍も可愛いんだ。本人だけがきっとそれに気付けなかったのだ。

 

木村伝兵衛という女が生きる道。

かたや木村伝兵衛は自分で自分を美人だと言い、男と寝ることを厭わない。だけど彼女が最後に選ぶのはなんだった？李の墓を作ってあげること、水野をバカみたいに盛大に華やかに村に送ってやること、大山が純粋すぎて歪んで愛した五島を守ってやること。自分を犠牲にしてでも選ぶのは、まわりの生きた人間への称賛だ。木村伝兵衛はいつも自分のことを後回しだ。ただひとつ、熊田への熱情を除いては。
彼女が殺人を許せないのは、自分が子を失った経験からだ。それはたった数ヶ月、産むことすら叶わなかった、年端もいかぬまだセーラー服をまとう若さで背負った業。世間は彼女を笑うだろう。だが我々は彼女を笑わない。

たかが、熱海殺人事件。

もっと大きいところでやればいいのに。とか。

配信やってほしい。とか。

ありがたいような、でもごめんなさい。生声で。花の匂いもタバコの薫りも、汗すらも届くようなあの空間で、きっとすべてが最適解だったんです。もし本当に、心の底から観たかったのにチケット取れなかったんだって方がいたらごめんなさい。なんでだろね、不思議なもので、あんなにシアターKASSAIが広く見えたのははじめてだよ。

 

でも最強の撮影班のおかげで、
きっと円盤でも劇場の空気がそのまま伝わると思います。
トレーラー、みましたか？

DVD Blu-ray、絶賛予約受付中です。
すでにたくさんのご予約、ありがとうございます。
メイキング的なおまけ動画もつく予定です。ぜひ。